2021年1-2月に東京の渋谷のシアターオーブにて上演され、3月からは大阪の梅田芸術劇場の上演がスタートするミュージカル『マリー・アントワネット』。フランス最後の王妃マリー・アントワネットが、華やかな宮廷生活やフェルセン伯爵との許されない恋を経験し、やがて革命の波に呑まれていく激動の人生を描いた歴史ミュージカルです。『マリー・アントワネット』への理解が深まる基礎情報をまとめました。

01 日本で生まれた、フランス革命を題材にしたミュージカル

『マリー・アントワネット』は、実は日本生まれのミュージカル。原作は遠藤周作氏が書いた小説『王妃マリーアントワネット』です。2006年に帝国劇場で公演を開始し、やがてドイツ、韓国、ハンガリーでも上演されました。フランス革命のミュージカルといえば海外発祥の『1789-バスティーユの恋人たち-』や『スカーレット・ピンパーネル』が有名ですが、『マリー・アントワネット』は日本発祥です。

02 違う世界で生きる2人のMA

物語は同じMAのイニシャルを持つ2人の女性を中心に展開していきます。1人はもちろんマリー・アントワネット。もう1人の女性はマルグリット・アルノー。貧民のマルグリットは民衆が飢えと貧困に苦しんでいることをマリーに訴えますが、王妃には彼女の声が理解できません。

マルグリットは次第に国民への想いやりがない王妃や貴族たちを憎むようになります。実は、マルグリットはこの作品で唯一の実在しない架空の人物。しかし彼女の言動には観客の心を揺さぶるようなアリティがあり、当時の絶対王政に抑圧された民衆の声そのものが反映されています。

イニシャルだけではなく、実は年齢も近いマリーとマルグリット。違う視点から波乱の時代を見る2人のMAの、心の動きに注目してください。

03 物語を大きく動かすきっかけは「首飾り事件」

作品の中では、「首飾り事件」という実際の詐欺事件が物語の重要なカギを握ります。首飾り事件は1785年、自称王家出身のラ・モット伯爵夫人がロアン枢機卿に高額の首飾りを買わせたことから始まります。

王妃に取り入りたいロアンは、ラ・モット伯爵夫人に「王妃が首飾りを欲しがっている」とそそのかされ、王妃へのプレゼントに首飾りを代理購入します。夫人は首飾りを王妃に渡す約束をしますが、それは真っ赤な嘘でした。ラ・モット伯爵夫人は首飾りをもって海外へ逃亡。

マリーは宝石商から未払いの請求を受け、この詐欺事件が自分の知らないところで起きたことを知りました。怒ったマリーはロアンを逮捕するために裁判を起こしますが、判決は無罪。宮廷司祭長であるロアンの逮捕に対して、民衆だけではなく貴族からも不満の声が上がったのです。

この事件を機に、マリーは「贅沢三昧のオーストリア女」と呼ばれて民衆の怒りを買います。もともと浪費癖があったところを付け込まれ、王妃を嫌う世論が強まったことが、マリーのその後の人生を大きく左右するのでした。

かわぐちさきこ
さきこ

ミュージカル『マリー・アントワネット』を観る際に知っておきたい基礎情報をご紹介しました。日本で生まれたこの作品は、抑圧される民衆の苦しみや身分が違う2人の女性の心境など、異国を舞台にしていながら現代の日本人にも共感できる部分がたくさんあります。史実とフィクションが絶妙に絡み合ったストーリーも魅力的!観劇前や観劇後にフランス革命にまつわる知識を学ぶと、作品への理解がさらに深まりますね。