コロナ禍で奇しくもデジタル化が推進した2020年。それは、未だアナログが根付く演劇界にとっても当てはまります。劇団ノーミーツは企画・稽古から本番まで一切会わず、オンライン上で演劇制作を行う劇団です。彼らが12月年末に届けたのは、観客が「選択」することで脚本が変わるという選択式演劇。物語の主人公は、コロナ禍に翻弄されたお笑い芸人たち。リアルで切ないストーリーと、人間力×技術力の結集に圧倒されました。(12月26日〜30日@オンライン劇場「ZA」)

01 観客が選択しリアルに物語が変化!チャット機能で新たな気づきも

『それでも笑えれば』の目玉は、なんと言っても「選択式」演劇だということ。物語のいくつかの場面で選択肢が登場し、観客の選択によって物語が決まります。つまり、役者たちは何通りもの台本を記憶し、その場の選択によって演技を変えているということ。デジタルの技術力はもちろん、俳優の演技力や臨機応変さがなければ成り立ちません。俳優たちの緊張感とは如何程のものだろうかと勝手に想像しては身震いしてしまいます。

さらに、チャットで盛り上がりながら観劇できるのもオンライン演劇の醍醐味。「ここであの設定が伏線になってたのか」というコメントに、“あ、そういうことか!”と気づかされたり。みんなで「わあああああ」と歓声をあげたり。飲食OK、どんな体勢で見ても怒られないのもオンライン演劇の良いところ。

02 コロナ禍の芸人をリアルに切なく描写。タイトル回収も

物語の主人公は、“今年が勝負の年”と意気込んでいたお笑い芸人。2020年3月、予定がまっさらになり、目標にしていた賞レースの開催も危ぶまれる。お笑い芸人に限らず、先行きの見えない未来に悩み、もがいた人は多かったに違いありません。この1年のリアルな状況に合わせて展開していく物語。そこには切なすぎて胸が痛くなるシーンも。

また、作品自体も「選択」は大切なキーワード。人生には様々な選択があります。夢を追うのか、安定を選ぶのか。自分のスタイルを貫くのか、魂を売ってでも成功する方法を選ぶのか。私たちはなんて難しい選択を日々してきたのでしょう。それぞれの選択に、正解などない。誰も「どっちが正解だったよ」なんて教えてくれません。それでも、どちらを選択したとしても、人生は続いていく。それでも、笑えれば。どんな選択をしても、それで良かったと、笑える人生でありたいなと強く願いました。

SaitoYurika
Yurika

何パターンもの物語が楽しめる『それでも笑えれば』は、文字通り何度も楽しめる作品。好評につき30日19時の追加公演も決定しています。毎回、公演後には出演者からのご挨拶やアフタートークも。コロナ禍だからこそ生まれた作品に、ぜひ2020年最後に参加してください。公式サイトはこちら